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あっという間にアカの他人。でも実はまだ切れていない、「彼」と私の仲。それぞれの「私」は闇を抱える、「彼」の影を引きずりながら。男女の営みのグロテスクな心理を描く“関係”小説。
大学教授、村川という男を取り巻く女たちの短編ストーリーだ。キー・プレイヤーの村川は1回も登場することなく、その周囲の女(たまに男も)を通して語っていくというストーリー。
短編なのだけど、村川という登場人物を軸に描いているため、各編はリンクされている。また、時間軸も微妙にズラされているので、ちょっと頭を働かせないといけない。
グっとくる編もあるんだけど、そうでない編もあったなー。グっときたのは2編。
1つは、巻頭に納められている編。なんとくなく、芥川龍之介に似た"えぐる"ような心理描写が好き。第3者的な立場からの視点が、一瞬にして容疑者というか自分が騙されているのではないかと感じる部分の描写は鳥肌がたった。
もう1つは、少年の話。「風が強く吹いている」でも感じたけど、このあたりの男同士の友情みたいなのを描かせると、この人はすごいと思う。実際には無いような友情なんだけど、そういうのってありかもと思わせてしまうんだ。
ただ、最後の編は必要なかったのではないかと感じた。1冊の本として余韻を持たせたかったのかもしれないが、逆効果に感じた。
星3つ。
面白い編はあったけど、嗜好に合わない編が多かったので。けど、この人の作品、自分にマッチする時はものすごくマッチする。その分、外れると思いっきり外れるのだけど。